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だから今は

 2011-03-19
連日放送されている地震関連のニュースの中に、しばしば避難所の様子が映し出される。水や食料の不足を含め、決して良いとは言えない避難所の環境もさることながら、今私が一番気に掛かっているのは、被災された方達の精神状態だ。

今回の地震のように、生命の危機に直面するような体験をした場合、肉体や精神が受ける衝撃の強さは計り知れないものがある。一度に家族や友人知人を亡くしたということ、家や財産等すべてを失ったということも、更にその衝撃の度合いを強める。そういった衝撃が心身に及ぼす影響、心的外傷後ストレス障害―PTSDへの対応が必要なのだ。

避難所の環境整備は、一番の優先事項であるとは思う。だが、出来ることなら、被災者の精神面のケアも急いでほしいところだ。精神科医や心理療法士、カウンセラーといった専門家を現地に派遣することを、ぜひリストに加えていただきたい。

テレビ画面に映し出される人々の様子を見ていると、その中には、PTSDの症状を呈している人達が少なからずいらっしゃる。正確には、その出来事の直後から一ヶ月未満に発症すると言われるASD―急性ストレス障害だ。

全身の倦怠感や疲労感、不眠、頭痛やめまい、肩こり、耳鳴り、手足の震え、動悸、呼吸困難、胃腸等の消化器官の不調、焦燥感(イライラ)、抑うつ、注意力・集中力・記憶力の低下、無感動等、神経症や鬱等に見られる症状が表れたりする。感情のコントロールが困難になる、人の視線が怖い、フラッシュバック等もその一部だ。

元気そうに、活力に溢れて見える人でも、心身に多大なショックを受けている。そういった人の場合、「災害躁病」の可能性がある。ショックに対する防衛機能が働き、落ち込んだりするのとは反対に、躁状態になるのだ。しばらくすると、その反動で激しい鬱状態に陥る人もいる。どちらの場合にしろ、心身に異常が起こっていることには変わりない。

特に懸念されるのは、つい見逃されがちになる子供達だ。笑ったりふざけたり、いつもと変わらないように見えても、彼らの中にあるショックやストレスは大人と変わらない。むしろ、それ以上かもしれない。特にこういった災害時、自分の周りの多くの人達、「大人」がそこここで泣いている光景は、子供達にとってはショッキングなことなのだ。「異常」を、彼らは敏感に感じ取っている。ただ、それをどう表現したらいいのかわからないのだ。

泣いている親の姿を見て、「自分がしっかりしなければ」と感情を無理に抑え込み、平然と振舞っている場合もあるし、その反対に、不安や恐怖から幼児返りすることもある。「一見普通」に見えたとしても、彼らが傷ついていることには変わりない。児童心理の専門家のサポートを、早急に行っていただきたいと思う。

被災者の中には、自分を奮い立たせて前向きにがんばろうとしている方達もいる。特に、親や家長、自治体の長や避難所の責任者等、家庭や組織の中でリーダーシップを取らなければならない立場にいる人ほど、自分の感情や思いを後回しにせざるを得ない状態になる。

だが、今すべての被災者の方達に言いたい。「泣いていいんですよ」と。年齢や性別、立場といったものは関係なく、気にすることなく、今は自分の気持ちに素直になっていいんですよ、と。

違う形でPTSDを経験した者として言わせてもらえば、今の自分の感情に素直に従うことこそが、回復への道なのだ。無理にそれを堰き止めることで、心身のバランスが余計に崩れていく。「現実を受け入れなくては」などと、今は考えないでいい。それは、回復への道の一番最後にある部分。ゆっくり時間をかけて、いつかたどり着けばいい場所だ。

今は、「自分の感情に素直に従う時期」なのだ。回復へ向かう道の一番最初の段階、「悲しむ時期」を通ってこそ、正しいプロセスを踏むことでこそ、心は本来の強さを取り戻せる。だから今は、泣いていいのだ。




■参考記事

自死遺族グリーフケアの会発足のお知らせ

「あの人」が逝った理由

沈黙の悲しみ(1)その衝撃

沈黙の悲しみ(2)それぞれの孤独

沈黙の悲しみ(3)偏見

沈黙の悲しみ(4)流説と虚妄の害

沈黙の悲しみ(5)不幸につけこむ人々

沈黙の悲しみ(6)あなたは悪くない

沈黙の悲しみ(7)遺族が受ける傷







カテゴリ :三位一体―心と体と魂の話 トラックバック(-) コメント(-)
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