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残像

 2010-11-05
作家の筒井康隆氏の小説に、少しずつ言葉が消滅していく世界を描いたものがある。その言葉が使用不能になると、それが表していた概念も一緒に消える―という話。

まず、「あ」という言葉がなくなる。それと同時に、「あなた」「愛」「赤ちゃん」「雨」といった「あ」で始まるすべての言葉が、世界から消えるのだ。その言葉の概念―意味や特徴も同時に消える。

つまり、「あなたというもの」「愛というもの」「赤ちゃんというもの」が存在しなくなるのだ。そして「い」が、「う」が、「え」が―といった具合に、世界からどんどん言葉が失われていく。

「あ」という言葉が消えた後、以後話の中には「あ」で始まる言葉は一切出てこない。消えた言葉はすべて「無」になる。「存在しない言葉」を使うことは不可能だ。そして最後、世界には「ん」という言葉だけが残されるのだ。

20年位前の作品だが、出版当初は「実験小説」として大きな話題になった。主人公の作家が、使用可能な言葉のみで自分の日常風景を綴っていくという過程もそうだが、「言葉が命」の小説において、その「肝」を極限まで削っていくというドMな発想は面白かった。

本当に「言葉」というものは必要なのか?「言葉」がなければ人間は自分自身を含めた「すべて」を語ることはできないのか?という疑問に対する「検証」であり、「限られた言葉」で人間はどれだけ語ることができるのか?どう語るのか?ということへの「挑戦」なのだ。

この「言葉狩り」、スピ系ブログに適用してみると面白いかと。セミナーや関連本で身に着けた付け焼刃の知識を、もっともらしい言葉を使って繰り返しているだけ―という彼らの文章で、ぜひ試してもらいたい。

愛、光、覚醒、波動、波長、魂、オーラ、ソウルメイト、大天使、守護天使、守護霊、女神、アセンデッドマスター、ハイヤーセルフ、癒し、浄化、気づき、学び、使命、豊かさ、高次元、瞑想、ヒーラー、スピリチュアル、サポート、宇宙、真理、リーディング、チャネリング、アチューンメント、チャクラ、アセンション、カルマ、トラウマ、ライトワーカー、メッセージ、エネルギー、シフト、メンター、手放す、必然、シンクロニシティー、パワースポット、パワーストーン、クリスタル―。

スピ系ブログは、一面こんな言葉で埋め尽くされている。どれを読んでも似たり寄ったり。同じ人間が書いているのかと思うくらい。彼らはそれを「真理にたどり着いた証拠だ」と言い張るが、単に「洗脳」されているだけかと。「真理」は多数決や信者の数で決まるものではない。

愛とか光とか覚醒とか、飽きもせずに繰り返すこれらの言葉を一切使わずに、彼らが言うところの「スピリチュアリズム」や「霊的真理」について語っていただきたい、と。それが出来ないと言うのなら、それは「真理」などではない。「真理」だと思い込んでいる「妄想」だ。

「決まり文句」を抜き去った後、そこに残るのは一体何だろうか?もしかしたらそれは、残像すらない一面の「闇」かもしれない。

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カテゴリ :三位一体―心と体と魂の話 トラックバック(-) コメント(-)
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