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秘すれば花

 2010-03-29
異性の魅力の一つとして、「ギャップ」を挙げる人は多い。かく言う私も、ギャップに弱い。自分の思い描いていたイメージと、「実物」が違っていればいるほど、「素敵♪度」はアップする。

だが、相手のほうからこれ見よがしにそれをアピールしてこられると、途端に冷める。「実はボク○○をやってるんですよー」「こう見えてボク○○なんです」などと、こちらが聞いてもいないのに、自分から得意げに語られたりすると全然面白くない。

ギャップというのは、相手が発見してこそ効果があるのであって、自分から公表した時点で、もうそれは本来の「価値」を失っているのだ。

変な話だが、「チラリズム」と共通する部分があるような気がする。微かに見え隠れする。見えそうで見えない。「本当はどうなってるんだろう?」と、こちらの期待や興味をそそる余地があってこそなのだ。最初からあっけらかんと「さあどーぞ!」とやられてしまうともうダメだ。途端に興醒めしてしまう。それは、「オープンにする」ということとは、まったく別のものなのだ。

「オンナはギャップに弱いからこれでイチコロだぜぃ!」とばかりに、勇んで最初から切り札を出してしまう単純な思考回路のオトコとは、たとえ恋愛関係になったとしても、飽きが来るのが早いような気がする。

簡単に先が読めてしまうというか、「こういう展開になった場合、多分この人はこういうことを言うんだろうなー」と、ある程度予想可能なオトコというのは退屈だ。安定や安心、「わかりやすさ」を求める人にはそれでいいのかもしれないが、「発見する楽しみ」を相手に求める私には、正直物足らない。


学生時代、講師のバイトをしていた学習塾の休憩室で、バイト仲間のAちゃんが一生懸命編み物をしていた。お正月に帰省した時、お母さんに教わってマフラーを編んだらしく、今度はお揃いの帽子を編もうとがんばっていたのだが、難しい部分に差し掛かって四苦八苦していた。

「あー!ダメだぁ!ミラちゃんわかる?」「ごめーん。わかんなーい」「誰か編み物に詳しい人知らない?」「うちのお母さんでよかったら教えられるよ?仕事が休みの土日限定になっちゃうけど」「そっかー、どうしよう」

2人であーだーこーだと言っていた時だった。「俺でよかったら教えるよ」と声がした。「え?」と振り返ると、それまで窓際のソファで本を読んでいたB君がこっちを見ている。「教えるって・・・編み物だよ?」「うん、俺編み物できるよ」「ひえーー!マジで!?」「うそ!?どうしてできんの!?」「うちの母親、家で編み物教室やってるから。子供の頃から横で見てたら編み方覚えちゃったんだよね」

男の子が編み物・・・というのも十分衝撃的だったが、何よりも「あのB君が」という部分が大きかった。B君は理系の学生で、見るからに頭が良さそうな(実際そうなのだが)クールなタイプ。外見も「インテリ系」なので、白衣を着て試験管や顕微鏡をのぞいているイメージが強かった。そのB君が編み物って・・・。高3の時、受験勉強に疲れると、気分転換に自分用のセーターを編んでいたとか。まったく人というものは、外見ではわからないものだ。

B君はAちゃんの編みかけの帽子と編み棒を手に取ると、さくさく編み出した。「ここの部分はこうすると・・・」と説明しながらどんどん編んでいく。Aちゃんが何度もやり直していた難所も華麗に突破。「あ、わかった!そうやればいいのかあ!」と、Aちゃんも納得&感心している。

「B君すごいね!助かったよ!ありがとうね!」「わかんないことがあったらいつでも言って」B君はいつものクールな口調でそう言うと、受け持ちの授業に出て行った。「ちょっと何あれ・・・素敵過ぎる!」「やられましたな。あれはかっこいいわ。参った」それ以来、私達の間で彼の株は急上昇したのは想像に難くない。

もう一人のバイト仲間C君は、今で言う「チャラ男」だった。頭も良いし、いい人なのだが、ヘラヘラして軽い言動が多いので、みんなから「もうちょっとちゃんとしろよー」とか「またそういうことして!」と、よく突っ込まれていた。ファッションも、服飾系の専門学校生によくあるような独特で目立つものなので、塾長から「服装、もうちょっと何とかならないか?」などと言われるようなタイプ。街中でナンパしたりとか、いわゆる「遊び人」。

ある時、そのC君から「知り合いの陶芸家が個展やってるんだけど一緒に行かない?」と誘われた。何でもご家族の古くからの知り合いの陶芸家の方が、東京都内の某有名庭園内にある邸宅を借り切って、個展を開いているらしい。

その翌日、C君にくっついて出かけた個展会場で、私は思いがけない彼の一面を知ることになった。受付で記帳するC君の手元を見ていたのだが、これが驚いたことにものすごい達筆なのだ。筆ペンでさらさら~と、いかにも「書き慣れてます」という感じ。受付にいた人も、超個性的な外見のC君と、達筆な筆文字の取り合わせが意外だったらしく、びっくりしていたようだった。

「あんなに字が上手だなんて知らなかったよ」「うちのばあちゃん書道家だからさ。その関係でね」「そうなの!?ちなみに何段?」「免状持ってる」もうこの時点で私は「ギャップ萌え」の状態だったのだが、次の一撃で完全にやられてしまった。

「あっちでお抹茶飲めるんだって。行く?」「行くー」普段は一般公開されている広い日本庭園の芝生に、緋毛せんが敷いてあって、個展に来た人達にお抹茶が振舞われていた。「樫田さん、お点前わかる?」「うん、略式でいいなら」「OK」

お茶をいただくC君を横で見ていると、動作に迷いがない。明らかに「きちんと茶道を習った人」のそれなのだ。「この先何があるか分からないんだから最低限のお作法だけは覚えておきなさい!」と、裏千家の免状を持っている母に首根っこを掴まえられて無理矢理教え込まれた程度の私とは雲泥の差。

「ちょっと!まさか『茶道も御免状持ってます』とか言わないでよ?」「いや、持ってる」「!!」聞けば書道家のおばあちゃんが、茶道も嗜む方だったそうで。おばあちゃん子だった彼はその影響を受けたらしい。普段のチャラい言動といい、超個性的な外見といい、「普段のC君」を知る私には、良い意味でショックだった。

OLの頃、出席した異業種交流会で顔を合わせた人で、資格とか免許とか、50種類以上持っている男性がいた。確かどこかのメーカーで営業職に就いている人だったと思うが、正直何とも思わなかった。確かに「フラワーアレンジメント」など、男性にはめずらしいものもあったが、資格マニアというか、ただ「やったことがある」「持っている」というだけのことであって、あくまでも表面だけ―というか。本人も、話のネタや「売り込み」に使えればいいという感覚で受けたと言っていたが、なにか「浅いなー」と。

B君にしろ、C君にしろ、その「ギャップ」が日常に根付いているのがいいなーと。彼らの一部になっているというか、きちんと「身についている」ところが素敵なのだ。「究めている」というか。ただ「興味があったので手を出してみましたー。何回かやったことがありますー」という所までは、誰にでも出来る。誰にでも出来ることに魅力を感じることはない。

最近の婚活ブームで、「ギャップをアピールしろ」などという「必勝法」があちこちで取り沙汰されているが、正直これ見よがしわねぇ・・・あくまでも「自然な流れ」の中で見えてくるのがいいのであって、見せびらかされると「必死にアピってるのね」と、なんだか気の毒さが先に立ってしまうのは私だけだろうか。

ギャップも特技も、ふとした時に明らかになる―というのが魅力的。「秘すれば花」でこそなのだ。



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カテゴリ :男と女・恋愛・結婚の話 トラックバック(-) コメント(-)
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