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アメリカにて「星を見ていただけなんです・・・」

 2009-08-26
アリゾナやニューメキシコ等、アメリカ南西部では夜間の照明が規制されている地域がある。それは星空を守る為。星明りを妨げない為の配慮で、外灯も必要最小限しか配置されていない。もっとも土地が広過ぎて人口密度が低いので、外灯が少なくてもそれほど困ることはないのだが。

観光客が集まる宿泊施設や商業施設の周辺でもそれは同様だ。照明の色も、間接照明で使われる柔らかいオレンジ色の灯りが大半。日本の都市部のように、昼間と見間違うような煌々とした明るさはない。

以前ナバホの居留地に住むウィーバー(ラグ織職人)の女性を訪ねた時、ちょうど彼女の中学生の孫娘が遊びに来ていた。私が日本から来たと知ると、「日本ってラスベガスみたいだよね!」と言う。「は?ラスベガス?」「うん!だって夜でも街が明るくてキラキラしてる」

聞けば1週間ほど前、テレビで「ジャパン特集」を見たらしい。その時に東京の繁華街の様子が映っていて、夜でもキラキラしている街が、彼女にはラスベガスのように見えたらしい。「なるほどねー、ラスベガスか・・・」思いもかけないその喩えが、妙に新鮮だった。

東京や大阪等の大都市に住んでいると、「街中は明るくて当たり前」という感覚があるので、外灯のことなど特に気にかけたこともなかった。むしろ、駅やビル等の公共・商業施設等で蛍光灯が1つ切れただけでも「なんか暗い」と感じるのは、その過度の明るさに慣れてしまったからなのだろう。

そういえば、Google Earthで「世界の夜」という衛星からの画像を見た時、日本は、北海道から九州まで、日本列島の形がはっきりと確認できるくらい光で満たされていた。「光で作られた日本地図」といった感じで。だが、アリゾナ、ニューメキシコ、テキサス等のアメリカ南西部付近は、黒い部分―明かりのない暗闇の部分が大半だった。(山岳・砂漠地帯が多いということもある)

アリゾナの大自然の中の居留地で生まれ育った彼女の目に、日本の夜の街がラスベガスのように映るのも当然のことなのかもしれない。

空気もきれいで外灯も少ない―当然星がよく見える。アリゾナを初めて訪れた時、何気なく見上げた夜空に、それこそ降るような夥しい数の星が光っている光景を見て、その場で固まってしまったことがある。

「空にはこれだけの星があるのか・・・」その迫力に圧倒された。昔信州で見た星空も圧巻だったが、アリゾナの星空は更にそれを超えていた。ハッと我に返ると首が痛くて動かせない。「痛ッたぁー!」下を向けないので腕を目の高さにまで持ち上げて時計を見ると、かれこれ40分近くもその場に突っ立って空を見上げたままだった・・・。

それ以来、アリゾナやニューメキシコに行く度、夜は必ず外に出て空を眺めるようになった。もともと星を見るのが好きで、小学生の頃からプラネタリウムに行ったり、星座板を買ってもらったりしていた。星座に関連したギリシャ神話もよく読んだ。

1967年生まれの私が子供だった頃は、首都圏でも結構星は見えていた。小学校の理科の宿題でも、「北斗七星とオリオン座の星の動きを時間ごとに観察しなさい」というのがあったくらいだ。だが、年々星が見えにくくなっていくこと、歳を経ていくのと比例して忙しくなる生活に、しげしげと夜空を見上げる機会も少なくなっていった。

が、アリゾナで星空を見たことがきかっけで、往年の「お星さまを観察しよう!魂」にまた火がついてしまった。

世間が寝静まった深夜1時くらいに、こっそりと部屋を出る(別に「こっそり」でなくてもいいのだが)。そのままホテルの建物の裏手、駐車場と隣接したサッカーコートくらいの広さの芝生の庭に向かう。そしてそのまま芝生の上にゴロンと横になる。頭の上には満点の星―。これがとにかく気持ち良いのだ。

日本で同じことをしたら不審者として職務質問をされそうだが、ここはアメリカ。深夜で宿泊客も寝静まっているし、周りには人っ子一人いない。邪魔されることなく、好きなだけ空を眺めることができる。大地に寝転がるというのも、自分が地球と繋がっているような感覚がして心地が良い。

その晩も、そうやって星を眺めていた。流れ星の数が信じられないくらい多い。時々衛星や飛行機が通過したりする。「あの星の光は何光年かな~」「あそこにある星はいつ生まれたのかな~」などと取りとめもなく考えていた。


が、次の瞬間、私は誰かに激しく体を揺さぶられるのを感じて飛び起きた。「Hey! Are you OK?(ちょっと!あなた大丈夫?)」見ると横には、心配そうに私を覗き込む60代くらいのご夫婦がしゃがみこんでいるではないか!「え?あ?Yes, I'm OK. Thank you...(大丈夫です。ありがとう)」

咄嗟のことで状況もわからず、何がなんだか訳が分からないままそう答えると、お二人はホッとしたように口々に言った。「よかった~駐車場に車を止めようとしたらライトの先に誰かが倒れているじゃないの!死んでるのかと思ってびっくりしたわよ~一体こんな所でどうしたの?!」「まったくだよ!驚いたの何のって!こんな時間にここで何をしてるの?!」

どうやら私は星を見ながらいつの間にか眠ってしまったらしい。そういえば遠くで誰かが「大変だ!誰か倒れてる!」と叫ぶ声がしていた。その声を聞きながら「あら!それは大変!」と思っていたのだが、その「大変な人」は私だった・・・。

「す、すみません。あの、でも、星がきれいだったから見ていただけなんです・・・寝ながら見ると首が疲れないし楽だし・・・あの・・・その・・・本当にごめんなさい!」恥ずかしさでしどろもどろになりながらそう言うと、そのご夫婦は「まあ確かに星はきれいだけど・・・」と呆れた顔をしていた。

「もう遅いから部屋に戻ったほうがいいわ。さ、私達と一緒に行きましょ」背の高いお二人に挟まれてエントランスまでトボトボ歩く私は、悪いことをして補導された中学生の気分だった・・・。「ま!背中にこんなに草と土をつけて!」髪やTシャツの背中を奥様に払ってもらって、完全に「しょーもないコ」扱いされた私はまったく立つ瀬がなかった。


翌朝、フロントで両替してもらっていると、後ろから肩をポンと叩かれた。振り向くと昨晩のご夫婦がニコニコしながら立っている。

「あ、昨日はいろいろとありがとうございました。お騒がせしてすみませんでした」「今日も星を見るの?」「え?うーん・・・また死体に間違われたらと思うと・・・」「そうね~、びっくりしたわよ~(笑)横に看板立てておいたら?『心配しないでください。ただ今星の観察中です』って」「あ、それいいですね~」

事情を知ったホテルのスタッフが、笑いながら折りたたみ式のデッキチェアを貸してくれると言ってくれたのだが、結局お借りすることはなかった。やっぱりゴロンとアリゾナの大地にそのまま寝転がって見るほうが断然いい。空と大地の間にサンドイッチされるあの感覚が気持ち良いのだ。イスを使えば身体的には楽だし快適だとは思うが、何となくその感覚が妨げられるような気がする。

いくら髪や背中に草や土が付こうか、死体に間違われて驚かれようが、やっぱり「地面に直接ゴロリン」は止められない。いい歳したアラフォーの人間のすることとは思えないが、でも私はまた深夜こっそり外に出て、アリゾナの大地の上で、キラキラのお星さまを心ゆくまで堪能するのだ。



【追記】
ある時、例によってアリゾナで星を見ながらホルストの「惑星」を聴いたのだが、鳥肌ものの「神の領域」だった。きれいな星空の下で「惑星」を聴く―おすすめです!




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