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沈黙の悲しみ(6)あなたは悪くない

 2009-04-07
すべての自死遺族に、同じ自死遺族の一人として言いたいことがある。それは「あなたはちっとも悪くない。あの人が自ら命を絶ったのは、あなたの責任ではない」ということだ。そして、多分、「誰も悪くない」。自死を選んだあの人も含めて―。

今心の中に、逝ってしまったあの人に対して抑えきれないほどの怒りや憎しみを抱いているとしても、彼や彼女の選択した行為を恥じる気持ちがあったとしても、それを無理に打ち消そうとする必要はない。

「こんなふうに思うなんて、自分はなんて冷たい人間なのだろう」今あなたはそう思っているかもしれない。あの人が死を考えていることにも気づかず、何の手立ても講じることができなかった無力な自分。それなのに、こんなことを思っている―死者を鞭打つような自分に対する罪悪感で押しつぶされそうになっているかもしれない。そして途轍もなく深い後悔の気持ちと。

だが、今あなたの中にあるその感情は「極めて当たり前のもの」なのだ。すべての自死遺族が経験するものであり、経験してきたもの。今自分の中にある感情の波、次々と湧き上がり、そして一瞬のうちに変化する、その目まぐるしい心の動きは「当たり前のもの」だ。残された者達が皆経験する「普通の状態」。あなたが狂っているわけではないのだ。

「自分も死んでしまいたい」と、絶望に打ちひしがれている人もいるかもしれない。多くの自死遺族が同様の思いを抱く。そんなふうに心が揺れるのは、あなただけではない。そう思うのは、それだけあの人を愛していた証拠。

今、世界が終わったように感じているとしても、この先自分の人生に、楽しいと思えることや嬉しいと思えることが二度と訪れないような気がしていても、あなたは復活する。以前と同じように笑ったり喜んだりすることができるようになる時が、必ずまたやって来る。

確信と共に言う。あなたは大丈夫だ。絶対に大丈夫。なぜならここに、「あの時」から20年経って「大丈夫になった」人間がいる。


「You'll be OK(あなたは大丈夫。きっと乗り越えられる)」20年前、母を亡くしてまだ間もない時、アメリカで、同じ痛みを持つ人にそう言われた。彼女は16歳の時、父親を猟銃自殺で亡くしている。

しかし、正直何年もの間、素直にその言葉を信じることができなかった。「本当に?本当にそうなれるのだろうか?」それほど私の受けた衝撃と傷は、大きくて深いものだった。

四六時中、母のことが頭から離れない。一瞬の内に目まぐるしく変化する感情、自分の意思とは無関係に、不意に湧き上がる涙、数々のフラッシュバック―。まるで、永遠に降りることができないジェットコースターに乗っているかのようだった。感情のアップダウンの激しさに、心身共に疲れ果てた時もあった。

「いつまでこの地獄が続くのか?いつになったらこの地獄から解放されるのか?」その闇のあまりの暗さに、深い絶望を感じることもあった。


だが信じてほしい。「夜明け」は必ず訪れる。あの人のことを、懐かしさと愛情を持って話せる時は必ずまたやって来る。穏やかに、深い理解と共に、「あの人の選択」を受け入れることができるようになった自分を、あなたは発見するだろう。その時は、静かに、優しく訪れる。

怒りも、悲しみも、動揺も、絶望も、恨みも、無力さも、罪悪感も、今は感じていていいのだ。それは、あなたが回復するための「正常なプログラム」に組み込まれていることなのだから。心の中にそういった感情が存在するということは、あなたが回復のための正しいプロセスにいるということ。

あなたは悪くない。あなたには、あの人の死に対する何の責任も落ち度もない。あなたは「罪人」ではない。

あなたの人生は終わってはいない。これからも、以前と同じように、他の「普通の人達」と同じように、自分の人生を生きていいのだ。楽しく、明るく、好きなように―あなた自身の人生を謳歌していいのだ。

今の辛さや苦しさ、それは後に姿を変えて、あなたに「何か」をもたらすだろう。すべてが「ギフト(贈り物)」に変わる瞬間。そして「それ」は、あなたの「人生の一部」となる。

私は知っている。あなたが必ずこの状況を乗り越えることを。

You'll be O.K.―きっとあなたは大丈夫。

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